水曜日の午前中。
通っているスペイン語学校から20mほどの距離のところに公園があって、
休み時間はそこでよくぼーっと過ごすので、その日もそこに行こうと歩いていたとき。
人通りもあって、車も通って、いいお天気で。
片手にかばん、片手にノートとペンを持って歩いていたら、人とのすれ違いざま、
急にかばんを引っぱられました。
一瞬何が起こったかわからなくて、でもかばんから手を離さず、とにかく
何を言っているのか分からなくとも大声で叫んでいました。
あーーー がーーーーー わーーーーーー!!!!!!!!と。
そしたらその人は何も盗らず私から静かに離れていきました。
周りのが来てくれて、「なんか盗られたの?」とか「大丈夫?」なんて声をかけてくれて、
学校の2つ隣の裁判所にはよく警察がいるので、そのとき警察がいるかどうか聞きに行ってくれて。
学校の先生もその裁判所のガードマンにあったことを話してくれて、警備を厳しくするよう言ってくれて。
確かに私は気を抜いていました。
アンティグアは「神様の手の中のように安全」だと思っていたし、この街で危ない目には遭わなかったし。
何も被害がなかったことは幸運なのかもしれません。
でもそれ以来、人とすれ違うだけでなんだかびくっとしてしまいます。
中米の治安の悪さはよくわかっていて、例え地元の人でも首都のグアテマラシティに行くときは腕時計を外しアクセサリーをつけず、お金を分散させて大金は靴の中に、と言います。
もちろん全ての場所が危ないわけではないし、時間帯にもよるけれど、
グアテマラ人でさえ「バスに乗るのは怖い」「ピアスは絶対に外して行く」などと言うのです。
そういうこと、わかったはずだったのですけれど。
ここにいるってことは危険な目に遭うリスクと隣り合わせにいるってこと、わかっていたはずなのですけれど。
「仕事がなくて、あったとしても家族を十分養うだけは食べて行けなくて、
だったら例え密入国という危険を冒してもアメリカに行くことが成功したら
お金を稼げて家族に送金できるよね。だからアメリカに行きたい人は多いし、
でも密入国のときうまくいかないと麻薬売人のグループにつかまって働かされるんだ、
グアテマラシティのバスの中でスリの仕事に就かされる人もいる、
でもそれが悪いって誰が言えるんだろう?他にどういう道があるんだろう?」
最近、話題に上ったときに先生が言ったことです。
強盗は悪い、引ったくりは悪い、お金を得るために他人を殴ったり傷つけたりするのは悪い。
確かに、確実に、間違いなく「悪い」のですが、「そういうことをする人は悪い人で、
やめさせないといけない」と簡単に言いきれることでもないように思うのです。
確かに悪いんだけど、でも、と思うのです。
貧困が生む悪循環のやりきれなさを思います。
ほんの数週間滞在しただけでは見えなかっただろうこと、旅の途中で立ち寄っただけでは
わからなかっただろうこと、そういうことが少しずつ見えてくる「半年」という滞在期間です。